テアトル梅田閉館によせて
悲しくてしょうがない。明日、人生でいちばん映画館に行っていた時期の、いちばん行っていた映画館が閉館する。中学三年から高校三年、物語の中に生き、解脱してゆく全過程。正直思い入れしかなく、彼処はエモでガチガチに塗り固めてある。「契約満了により」ってなんだろう。わたしが映画館に行かなかったのが悪いんだろうか。私たちになにもさせないことの意味がわかるか?悼ませろ悼ませろ。もう永遠に新作の知らせをすることのないスカスカにあいた壁、付箋なんて何枚でも書いてべたべた貼って帰ればよかった。嫌すぎて今でも地団駄を踏みそうなのに、あの場でだって暴れればよかった。ずいぶんもの分りが良いですね。雨の日も風の日も(たしか台風の日に行ったこともある)、何度も降りた石階段、ドアの木製の取っ手も、出口の近くにはまった小さいチラシラックも大好きだった。どの時も特別だった。きみはここで映画を観たことのある人の数だけ、人の記憶を半分持っておくべきだったのにやめてしまう。破棄されゆく、同じような材料でできたちがう記憶、どこにでもあって似ていてちがう人の欠片。いっそ地下ごとモルタルで埋めてデッカい石碑にして下さい。渋谷の「シネマライズ」が閉館したとき、その後に上京したわたしはどちらかというと跡地にできたライブハウス「WWW X」のほうが自分ごとに近くなった。ここもまた誰かにとってのそういう場所になるのだろうか。あー嫌だな悲しいなさみしいな。ありがとう、さようなら、ご機嫌好う。とっても、また会いたいですテアトル梅田